月刊群雛2016年03月号サンプル&著者インタビュー
私の幸福は、彼女を絵画に閉じ込めることでしか成立しないと思っていた──。
高校生活最後の日。卒業式を目前に控え、はしゃぎあっているクラスメイトたちに馴染めない弓は、息継ぎを求めるように朝の陽射しが差し込む校舎の片隅へと向かう。捉えどころのない気持ちを持て余す弓。そんな彼女を探してひとりの少女が現れる。この古い学舎での時を共に過ごした掛け替えのない友人、映子だ。弓はこの場所でうつくしい彼女の笑顔を目にするたび、彼女を鳥籠に閉じ込めるように、絵の中に閉じ込めてしまいたいと願っていた。
古い窓硝子ごしに降り注ぐ、柔らかな早春の日差しの中。卒業という別れの時を目前に、揺れ動く少女たちが繰り広げる儚い一幕。
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