── 大人になって、いじめっ子と再び出会った。
僕の趣味は、趣味と言うには深刻すぎると自分でも思うが、復讐計画を作ることである。
相手は、山岸涼。十年前、中学生のころ、僕の人格をズタズタにした男だ。
いまだに当時の屈辱を思い出し、夜中に飛び起きることがある。そんなときはパソコンに向かい、山岸の殺害計画を作る。
絞殺。
撲殺。
扼殺。
焼殺。
計画のテキストファイルは、百五十を越えた。
実行したことは、ない。
僕にできることは悶々と怨念をキーボードに叩きつけることばかりだった。計画は何の意味もない。それは判っていた。
虚しい計画を徹夜で作った朝、往復はがきが届いていた。同窓会の案内だった。
幹事は、山岸涼。
はがきを破り捨てようと思った。
しかし、十年も山岸の記憶に縛られ続けていながら、僕にはチンケなプライドがあった。
山岸ごときに人生を左右されたくない。
僕は、同窓会に出ることに決めた。
忌まわしい記憶に、僕は勝てるのか。
(※『月刊群雛』2016年08月号掲載作品のサンプルおよび作品情報&著者情報を収録しています)
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