平成の幕開けとともに誕生した和(かず)。平和に、たくさんの人に囲まれて生きることを願う両親。みんなと一緒に、学校に行きなさい。嫌だ、休み時間に踊るだけで奇異の目で見られる学校なんて……。
僕は「自由」と出会ってしまった。幼い僕の心をつかみ、僕の魂をゆさぶり続けたのは、踊ること。国境も、人種も、性別も関係ない。そこにあるものは、美しい躍動のみ。僕の希望はただ、その瞬間、その場所で、自分らしく舞うことだけ。
しかし、隣国との間で戦争が起こり、僕のもとにも召集令状が届く。愛するひとを守るため、平和を守るため、戦争に赴くことが唯一の答えなのか。みんなと違う道を選び、自分らしく生きることは、いけないことなのか。
冨士山 絢々(著)
谷口 恵子(編)
w.okada(デザイン)
NovelJam 2018 出場作品
本を入手していないとコメントは書けません。
冒頭に登場する人間離れした天才ダンサーはニジンスキーや土方巽のような存在なのかと想い描きながら読み進める。物語のスケールは想像以上に大きく、戦争が引き起こす他民族への憎悪といったシビアな問題にも真正面から向き合っている。またタイトルの「舞勇傳」からして「舞」と「武」、「ダンス」と「空手」の対比も印象的。