人生すごろくからドロップ・アウトした黒坂玲は
誰にも言えない秘密を抱えていた。
生殖機能を失った玲は自らの手で「自分の子」を生み出すことに苦心していたのだ。
きっかけはささいなことだった。
「子供がいれば、すごろくも逆転できる」、たったそれだけのこと。
マンションの一室で培養液と精子と卵子から受精卵を生み出した。
きっと、ビニール袋の子供は世界を変えてしまうだろう。
生命のタブーに挑戦した意欲作。
菊池健氏「鬼才漫画家のタガが外れていく現場に遭遇した」とも言わせた超展開、刮目あれ。
山田しいた(著)
小野寺ひかり(編)
山家由希(デザイン)
NovelJam 2018 出場作品
本を入手していないとコメントは書けません。
著者に内容された狂気の世界、一端が垣間見える渾身の一作。胎児が世界を変える武器ともなるのかどうか。ノベルジャム担当編集としてもその後の顛末が気になってしまう。主人公が男性か、女性かを決めたくない、といった著者の思惑に自身のさらなる創作意欲も刺激される。
→特設サイトOPEN
https://peraichi.com/landing_pages/view/diybaby
→告知アカウント
https://twitter.com/noveljam2018_de
とがったアイデアに「これは面白くなる!」と思いました。
更に現代の若い人たちの抱えたモヤモヤした思いも絡んで、とても共感。
作品の別展開も期待してしまいます(漫画化とか…)。
凄まじいビジュアルと創造性を兼ね揃えている秀作。
冒頭を試読していただければわかるが、本当に掴みが上手い。こういうブッとんだアイディアを用いる場合、その動線がもっとも重要かつ難しくなるわけだけれど、一段階落とした現実感のある前提から、終始読者をざわつかせつつも、気がつけばイセカイへ連れていかれているというベストとしか言いようがないストーリーラインになっている。あと、やっていることのサイコパスさに対して主人公がグダグダなのもバランス感覚がよくセンスが良い。
それだけに本作が打ち切りになってしまったことが悔やまれる。
俺は悔しさのあまり吠える。
「誰だよ。三日で小説を作ろうとか言った奴はさぁ!」そういうイベントである。
ちょっぴりドライで斬新な文体。赤ちゃんはどこからくるの?の解答をポップ且つアヴァンギャルドにしたらこんな感じになるんでしょうね。実験小説としても楽しめます。個人的には夢野久作のドグラ・マグラに挿話されている胎児の夢を思い出しました。