和釘職人・宗方永治の悩みは最近、釘の声が聞こえること。超能力か、それともただのノイローゼか。釘の声にうんざりな毎日を過ごす永治だったが、さらなる悩みが増えつつあった。それは離婚して永治の家に転がり込んできた姉・智世の事だった。彼女の離婚も気になるが、あいかわらず釘の声はやかましく……だが意外にもそれは、全ての問題を解決するカギなのだった(クギなのに)。
NovelJam2018秋参加作品
内藤みか賞受賞作品
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釘が喋る。他にコメントを送られている皆さんと同じように、このワンアイディアだけで、この小説はぶっちぎったと思います。面白かった。興味を持たれた方は是非、読んでみてください。損はしないと思いますよ。
わたし的に細かいことを言えば、まず、釘の声が聞こえる主人公の、自分は聞こえるのに他の人には聞こえない、という端から見れば異様に見える描写を、もっと突き詰めて欲しかったな、ということですね。例えば『プーと大人になった僕』という映画を見た時に感心したのは、「ぬいぐるみは喋らない」という常識を大人は持っていて、プーやピグレットがロンドンの街で会話するだけで大人がびっくりするという描写を真面目にやっていたことですね。わたしだったら、今の時代ならリアルにぬいぐるみが喋っても不思議じゃないと思うけど、そうじゃない人もいる。この小説でもその辺をもっと突っ込めば奥深くなったのになと思いました。
あとはわたし的な想像というか要望ですが、釘の声の声質ってどんなのかな?と思いましたね。釘だから金属質で宇宙空母ギャラクティカのサイロン兵みたいなのかな?とかね。この辺は続編?を書かれる時に対応してくれると嬉しいですね!
最後に、装丁は初稿のものが好きでしたが、最終稿のものも洋書っぽい感じでいいですね!
「全ての問題を解決するカギなのだった(クギなのに)。」でまず笑わされました(笑)
主人公の永治に親し気に語り掛ける釘、世間話する釘、恋する釘…人間臭い釘たちが可愛くてたまらないです。
それに対する永治の冷静なツッコミや心の声。対照的かつ小気味良い。
物語はすべて、そんな釘と永治の会話によって進展します。
読んだ後、きっとあなたも釘と話したくなる…?かも!
お話の始まりも、アクシデントも、そして解決も…”みんな釘のせいだ”!
作品紹介の最後の一文がナイスです。
「喋る釘」がテーマな話。
読み進めていくうちに、釘が愛しくなってきます。
和釘買おうかな。声が聞こえてくるかも。
日常+ちょこっと怪奇?ファンタジー?なお話が好きな方におすすめ。