【NovelJam2018秋 花田菜々子賞受賞作】アンバランスな家族。心を開けない友人。曖昧な生きづらさを抱えて過ごす主人公・新山真希は、高校三年生の夏に写真家で同い年の「little」と出会う。作品に魅了され、やりとりをする中で、ある日名曲喫茶「リトル」への招待を受けた。「家族とは家族になれなかった」人たちが集うリトルで、真希の人生は緩やかにも確実に変化を遂げていく――。家族とは何か、ホームとは何か。「誰か」との出会いを経て、自分の生きる道について考える成長譚。
本を入手していないとコメントは書けません。
紙の望遠鏡は、頼りなく、弱々しいものかもしれないけれど、彼らは小さな希望を見つけることができた。「夏」の持つ容赦なく強大なイメージは、暴力的ですらある。その中にあって、彼らは小さな希望を手に入れることができた。
読ませていただきました。
リトラスにでてくる主人公たちのように何らかの事情で家族と家族になれなかった経験をしている人達へ、背中を優しく押してくれる内容だと感じました。
機能不全家族で育ち、大人になった人達がきっと一度は感じてきたであろう心の奥にある"モヤモヤザワザワ"した言語化するのが難しいきもちをしっかりと描いていて
特に主人公が学校の階段を上がる場面で、感じている周りのざわめきや笑われているような感覚、「みんな死ねばいいのに」とつぶやくところは、私自身そのような経験や感じたことがありましたし、とてもリアルに重なり記憶が鮮明に蘇りました。
爽やかな夏の気配を感じつつ、そうした主人公たちの現状から一歩前にでようとしている決意や未来への可能性のようなものを感じさせて終わるラストがすごく好きです。
藤宮さんのフィルターを通して描かれる独創的な世界をもっと読んでみたいと思いました。頑張ってください!!
何者かになる、ということは、誰にとっても人生における最大の難題のひとつだろう。既に何者かになった人にとっても、これから何者かになろうとする人にとっても、この物語の主人公達の、何者かになろうとする瞬間を追体験することは、強く共感できることであり、深く感動できることでもある。その一点にまっすぐに向けられた、著者の視点が素晴らしい。
読んだ!「家族とは家族になれなかった」って一文がずしんと来た。読みながら色んな映像が浮かんで、それを写真にしてみたいなぁと思うのは、もう…カメラマン病。爽やかな読了感やった。