[NovelJam2021Online 特別賞受賞]
NovelJamという小説を書くイベントに提出された自由詩です。小説とは違う面白さを味わってくれれば幸いです。
内容は、詩と謳っているからほんわかしたものなのかと思いきや、意外な苦みや深みが言葉の中に隠されています。Innocentには透き通る白さと染みのような黒さが混じっている。このことを、読んでいただいた皆さまのそれぞれの心の中で受け止めて欲しいです。
〈NovelJam2021Online参加作品〉
本を入手していないとコメントは書けません。
作者は感傷的であることを避ける。整えられた物語として消費されることを避ける。淡々と組み上げられた文章は時間軸だけが頼りの異形の迷宮のようですらある。しかしその時間軸は、遥か昔の物語のダイナモを伴い、さらに未来を見据えた、生きていく意思の太いベクトルに貫かれている。なぜ、何のために書くのかという疑問は、この構築物の前では何の意味もなさないだろう。
「Innocent」と冠された、M☆A☆S☆H氏のNovelJam初参加作品。
詩なのか、回顧録なのか、エッセイなのか、小説なのか、不思議な雰囲気を孕んでいる。
昨今NovelJamにおいては「実験的な試み」を用いた作品が、しばしば現れ、
本作品もそれに属するような雰囲気を持つが、まったくそうではないことを強調したい。
いわゆる小説の作法を熟知しながらも、それをあえて鑑みず、ほとんど句読点を用いずに自身の中にあるビートやリズムを刻む。そんな印象が強かった。
読点についてはまったく存在せず、いわゆるスタッカートを排して、スペースを用いてブレス(息継ぎ)を整えている。
時折あらわれる句点については、楽章を切り替えるための舞台装置として本能的に用いていると感じられた。
劇中内には著者のイマジナリーフレンド、いや本人の人格のひとつであると思われる『楼蘭』なる人物が登場する。旧字体や時代めいた台詞で著者と対峙する。
これは深層内に存在する著者本人である。現(うつつ)をサヴァイブするのに必要がないがゆえに日常生活を過ごす分には顕在化されないが、著者の自我が対自核に向かう際にその姿をあらわす不思議かつ、皆が持つ存在だ。
人生の際(きわ)にはエッジ(彼岸)が可視化される。
普段決して表層意識に出てこない自分自身が手を取ってそこに導いてくれる。
「ここがおまえの果てである」と。「この際を越えてはならぬ」と。
その風景をありありと見せて、人生や自分の在り方を深く考えさせられる作品だ。
この時代における「キャッチャー・イン・ザ・ライ」とも言える。
彼岸であそべ。墜ちぬように手をさしのべるから
過去から現在に至るまで著者のすべてをぶつけ、真摯に落とし込んでいった作品だと感じます。短い期間に取り組むからこその躍動感、ほとばしる思考。本気で生きているか?そう問われた気がして、背筋が伸びました。