2022年4月2日更新
名前修正
…………………………
あまりにも底辺に育った男の夢は、その対極に位置するかのような指揮者という演者であった。
家田鉄平は子供の頃にテレビで見たオーケストラの指揮者に憧れ、なることを夢に見た。とはいえ家は貧乏で、中学を卒業すると同時に工場に働きに出ることになった。
居酒屋で働く美しい里美と出会い、テレビ番組の企画でドイツへの指揮留学が実現する。教育者アトマンの家にホームステイしながら、同世代の天才スティーブとともに指揮の練習に励む。青春の情熱を指揮の向上させることに使い、最後には見事オーケストラを指揮して、ラベルの「ボレロ」を振り切った。
しかし日本に帰ってくると、音楽とは無縁の貧乏生活に戻ってしまった。アルバイト生活しながらもオーケストラの雑用係になると、指揮者のアシスタントになった。時にオーケストラから意地悪されたりしながらも、鉄平は成長していく自分を感じていた。
指揮者の田中巧が引退する際、鉄平は後継指名を受ける。だがその条件は、巧の娘と結婚することだった。女優をしている巧の娘のクミは悪質なプロデューサーらにひどいセクハラをされ体を傷つけていた、その面倒を見る代わりにオーケストラを譲るというのだ。そしてそのことを知らないはずの里美が失踪してしまう。見つからない里美を諦め、鉄平はクミとの事実婚関係になる。
テレビで自分を切り売りしてオーケストラのチケットを売ろうとする鉄平だったが、世間では徐々にひんしゅくを受けるようになっていった。コンサートマスターに端本恵美子を招聘し、オーケストラをファミリー向きではなくしたことで人気は落ち、アトマンの死や、クミとの関係解消が重なることでうつ状態に陥る。
数年後、鉄平は路上生活者となるが再び運命のドアが開く。旧友や里美との再会、鉄平はもう一度指揮台に立つ。
さら・シリウス:あらすじ
春日 寛:文章
本を入手していないとコメントは書けません。