新聞を開くと毎日のように凶悪な事件が掲載されていた。姑息な手段で資産をため込む輩の記事も目に余った。小百合さんはそんな記事に目を通しながら世知辛い世の中を憂いていた。ある日、小百合さんは持病の片頭痛に顔を歪めた。片頭痛の痛みは一瞬だった。痛みが去ると小百合さんはとても穏やかな気分に満たされ、我知らずフッと唇の先を震わすのが癖になっていた。その日も片頭痛が小百合さんを襲った。小百合さんはグッと歯を食いしばり激痛を堪えた。痛みが去りとても安寧な気分に満たされフッと口もとを綻ばせた小百合さんの双眸がギラッと光った。
慎ましくお淑やかな小百合さんと穏やかな性分の敏行は一大決心しました。そんなふたりを決して笑ったりしないでください。ふたりはとても真剣なのですから。
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