本書は中国清代の翰林院(国史の編纂などを担当)や教育行政の役人であった徐松(じょしょう。1781~1848)のまとめた地理書『西域水道記』(中国西北の河川誌)から巻一、巻二のタリム河~ロプノール水系の翻訳である。タリム河は全長2,179km。天山山脈を水源とするアクス河、カラコルム山脈からのヤルカンド河など主に9つの支流を集めて流れ、海へ出ない中国最長の内陸河川である。その長さは長江、黄河、黒龍江についで中国第4位。日本一の信濃川の約5.9倍。タリム河の源流から下流まで、ほとんどを大沙漠に沿って流れる世界でもまれなその流域はどのようなものか、日本では見ることのできない河流のしかも清の時代の状況を知る絶好の資料である。
歴史上、タリム河の河道は南北に移動して定まらず、近代には主流は東の孔雀河に流れ込んでロブノールへ注いでいた。ロブノールの湖面は近年の研究推計では古代には一万平方kmを超える大きさであったという。タリム河を水源とする「さまよえる湖ロプノール」に水が溢れていたころの状況は?
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