ギターや音楽の小説ばかりを描く野良作家が、そのエッセンスを凝縮してジャムしながら全力投球しました。もともと削りながら端的に描く文章を、向こう側が透けるほどまで研磨しております。あなたはその向こう側になにを見出すのでしょうか。たぶんそれはきっと、美しい明日につながる光を放つ、あなた自身のこころにあるものだと思います。
NovelJam2018秋 参加作品
本を入手していないとコメントは書けません。
ロックバンドを描いた小説。わたし的には、わたしの感性がバブル時代で止まっているから当てにはできないけど、ロックバンドを描いた物語と言えば『TO-Y』『NANA』『BECK』などが思い浮かびます。でも『BOX』は全然違う。どちらかと言うと、花村萬月の『重金属青年団』のような泥臭さがある。今の時代ならロックバンド=青春、情熱と夢と挫折、というステレオタイプが罷り通る気がするけど、真のロックはもっとドロドロしていて、どちらかと言うと、金子正次の『竜二』のような任侠映画の匂いがする。それが『BOX』の中にあるロックだと思いました。
尚、NovelJamの審査時にはカットされていた官能的なラストシーンが第二版では収録されています。ひょっとしたらBCCKSで18歳以上閲覧の制約が出てくるかもしれませんが、これはこれで有りだと思います。読み込めば、本編に挟まれた食に関する描写の艶やかさが、ラストの性に関わる描写の艶やかさに共鳴していくのがわかります。これも作者の才能のひとつなのでしょうね。