存在しないはずの四番目の歌を聞くと、子供は家に戻れなくなるという噂がある神隠しの団地。そこに住む小学四年生の男の子、健司は「帰りゃんせ」の歌を口づさむ謎の少年ハスに出逢ってしまう。その子に連れられて、家から遠く帰れなくなるまで離れてしまった健司は、母親のものへと必死に戻ろうとする。けれど、ハスは健司の帰宅を妨害するのだった。はたして健司は大好きなお母さんのもとへと帰ることができるのか? ハスは何者なのか? 四番目の歌詞に秘められた意味とは?
NovelJam2018秋 参加作品
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野口雨情の童謡『とおりゃんせ』をモチーフにした小説。『とおりゃんせ』は怖い内容の歌だということを耳にしたことがあったのですが、この小説に出会うまでは、実はそのことをすっかり忘れていたのです。読み始めて、急にそのことを思い出して、思い出さなくてもいいような不吉なことを思い出したので、どんよりとブルーな気持ちになりました……。そういう意味では、この小説はホラー小説として成功していると思います。
あと、会話の質感が「わしゃわしゃ」しているのが独特で良かったですね。「ラジオドラマに向いている」と言う審査員の方がいましたが、わたしもそう思います。ラジオドラマと言うよりは怪談ですね。稲川淳二や織田無道のような語り部がこの小説を朗読すると、雰囲気が出ると思います。
最後に余談ですが、装丁は大友克洋の『童夢』を思い出しますね。