表紙絵の草木は、翻訳者さんから送られて来た写真の1枚をイメージしました。
その写真は小さなタンポポ等の野の花が一面の春の風景でした。
まさにスーちゃん一家が住んでいそうな場所。
おはなし
仔ネズミのスーちゃんはある日、母ちゃんがとても大切にしていた人形を落として割ってしまいます。
怒った母ちゃんはスーちゃんに
「こんなおちょかは お母ちゃんの子ぉと違(ちゃ)うっ!
スーは橋の下で拾って来た子ぉやったんやでなっ」
と怒鳴ってしまいます。
とっても哀しい気持になったスーちゃんは一大決心をします。
本当のかあちゃんに会いに行くと。
湖東地方のことば翻訳者さんより
滋賀県の方言は、いわゆる関西弁の一種です。
しかし、関西の方言といえば大阪弁や京言葉が圧倒的に有名で、滋賀県の方言はいまいちよく知られていません。
県民自身、自分達の方言を「関西弁」だとは思っていても、「滋賀ならではの方言」となると普段ほとんど意識せずに暮らしています。
滋賀県の方言を指す言葉も確立していないように感じます。
「滋賀弁」と呼ぶ人もいますが、県名に「弁」を付けただけで少し安直な印象。
年配の人のなかには「江州(ごうしゅう)弁」と呼ぶ人がいます。
個人的には歴史を感じさせる「江州弁」という呼び方が復活してほしいですね。
さてその江州弁ですが、滋賀県は真ん中に琵琶湖があるせいで、
狭い面積のわりにまとまりがありません。
今回、湖東地方北部に位置する犬上郡出身の祖父母が話す方言をイメージして訳しました。
そのため、大津市など他の地域の方が読んだら「私の方言と全然違う!」と思われることでしょう。
これこそが江州弁!というわけではなく、こういう江州弁もあるんだと思って読んでください。
湖東地方の江州弁は、「しやはる→しゃある」「来やはる→きゃある」「居やはる→いやある→やある」「してはる→してやある」のように「~はる」が「~ある」や「~やある」になったり、こそあど言葉の「そ」が「ほ」になったり、
「~のや」が「~にゃ」になったり、語尾に「~ほん」が付いたりするのが特徴です。
特に「~ほん」は全国でも滋賀県の一部でしか使われない稀少な言葉なので、今後も使われ続けてほしい江州弁です。
この絵本が、他都道府県の方にはスタンダードな関西弁とは少し違う江州弁の魅力を知るきっかけに、
同郷の方には自分達の方言を再認識するきっかけになりますように。
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