ソムリエール頼子は黒、料理人美奈は白のタブリエ(エプロン)をつけて働く三十歳目前の女の子。タブリエの色と同じく、性格も正反対のふたりの仕事と恋の物語。
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正直に言えば、美奈はけして遠山にどの仕事をさせたらいいのかわからなかったのではない。
どれも遠山に奪われたくなかっただけだ。
仕事覚えも良くて器用な遠山はきっと美奈が仕事を与えれば与えただけすぐに自分の物にしていく。
美奈はそれに怯えていた。
『遠山ができるようになっても、美奈にとって当たり障りのない仕事』
それを探すのに頭を悩ませて。
岩崎は今まで坊主に自分から仕事を教えることはあまりなかった。
坊主への仕事はいつも美奈を通して指示していた。
それなのに、遠山は。やはり素質があるということだろうか。
岩崎は美奈の遠山への嫉妬心を見抜き、美奈には委ねられないと判断したのか。
苛立ちと羞恥が混じりあって美奈の体温を上げる。
握った掌にはじっとりと汗をかいていた。
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仕事に、恋に。 悩める女性に読んで欲しい。
共幻文庫 短編小説コンテスト2015
最優秀作品賞『恋の章の終わりに』連載化作品
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〈著者紹介〉
浜野稚子(はまのわかこ)
関西在住の主婦。
「自分だけの切り口を見つけて、普通の人の日常をよりリアルに感じていただけるような物語を書きたいと思います」
☆Twitter:https://twitter.com/hamano_wakako
★作品HP:http://koisurutablier.officialblog.jp
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