《大好評の恋タブシリーズ、感動の最終回!》
頼子は自分のことをよく話す。
一つの出来ごとについて、自分の思ったことをああだこうだ。
「なぁ、美奈どう思う?」
笑い話も腹が立った話もくだらない話も、表情を変え身振りもつけて忙しく。
そのくせ頼子はあまり恋の話をしない。
見た目が派手なため恋愛に積極的そうに見えるが、その方面には意外と弱腰だ。
しかし、美奈はわかっている。頼子の口からよく出て来る名前で、頼子が誰のことを想っているのか。
無駄に一緒に暮らしているわけではない。頼子は美奈の同僚であり、同居人であり、友人だ。
重たいと思ってなるべく人とのかかわりを持たないように気を付けていたのに、一人で三役も持っている近しい人を作ってしまった。放っておけるわけがない。
「さぁ、うちらも行こか」
美奈は白いタブリエを緩める。
「おう」
遠山が腰に手を当て掛け声のような返事をした。
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