ある日、トオルの元へ警察から電話がかかります。十九年前、母と自分と別れ、薫と言う女性と森の奥の山小屋で暮らし続けた父親のシンジの遺体発見の知らせでした。安置所で出会う謎の女性ミチと残された遺書。そこには山小屋を彼女に、ピアノをトオルに遺すと記されていました。他にも山小屋には先端に切断の跡が残る奇妙な形態の置物があったり、ピアノは黒鍵と白鍵が逆に塗り替えられていたのです。そんな中、トオルは母から十七年前、薫が既に死んでしまっていることを知らされます。ところが彼は死後、送られてきた薫からの手紙を持っていたのでした。一体、誰が薫になりすましたのか。森にあらわれる一匹の離れ猿ツァラツストラ……。深まる疑問。カノンの調べは、やがてやってくる森を襲う激しい風雪とともに、トオルとミチを永遠回帰の世界へと導くのです。
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