このよくわからない男は自分のことを「せんせい」と呼べという。その名前は「先生」ではなく平仮名で「せんせい」ということが大切なことらしい。わたしは名前をちゃんと言おうとしたのだけれど、相手がそんな感じだからわたしも自分のことを「きみ」と呼んでくださいと言った。漢字の「君」ではなくて、わたしも平仮名にこだわった。このときに「せんせい」と「きみ」の不思議な関係が誕生したのだ。(『ほんの少し』より)
同じアパートに住む「せんせい」と「きみ」。「きみ」である「わたし」がほんの少し、なにかが変わる瞬間を描いた『ほんの少し』を含む、全6編の珈琲をテーマにした物語になります。
目次
1.珈琲。
2.髭を剃ってから
3.器(うつわ)
4.ほんの少し
5.呼吸
6.缶コーヒー
本を入手していないとコメントは書けません。
暮らしの中にある、いつもの珈琲。
それは私の日常に欠かせない、豊かさをもたらしてくれるものです。
そんな大好きな珈琲をテーマとして紡ぎ出される瑞々しいストーリーに、爽やかな感動と幸せを感じています。
特別なカップで飲む珈琲。
心をほぐしてくれるような優しい珈琲。
体と心に馴染むようにそばにいてくれる安心感。
日常を彩ってくれる、大切なひととき。
この6編の物語たちが、たくさんの愛おしさを心に届けてくれました。
言葉のリズムや空気感。透明な感性。
それらがひとつの優しい空間を形作っているようにも私には感じられます。
その癒しの空間にゆったりと浸りつつ、最初から最後まで心地良さに包まれながら読ませていただきました♪